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家族療法 (FBT) とは

Family-based Therapy

摂食障害の発症のピークは10代後半です。そのように若い神経性やせ症(拒食症)の患者さんにとって、医学的に安定した状態であれば、家族療法が最も有効な治療法だと言えます。この治療法は、親が子どもの世話をするために持っている資源を最大限に生かし、医療者や公認心理士、臨床心理士らの「FBT治療者」のガイダンスの下で、家族がリードしながら子供の回復を支援する治療法です。

家族療法は、年齢の若い神経性やせ症の患者さんに対する最も効果的な治療法であり、海外では治療の第一選択肢と位置付けられています。スタンフォード大学とシカゴ大学の研究によると(※1)、若い神経性やせ症の患者さんを、家族療法(FBT)と思春期個人両方(AFT)とにランダムに分け、それぞれの治療法を一年間受けてもらったところ、家族療法を受けた患者さんの50%が完全寛解に至ったのに対し、思春期個人療法の完全寛解率は23%だったと言います。完全寛解した患者さんの一年後を比較しても、家族療法を受けた場合の再発率は10%であったのに対し、思春期個人療法の再発率は40%だったそうです。

このように、家族療法は非常に効果的な治療法ですが、残念ながら、日本ではいまだにほとんど認知されていません。家族療法の専門的な訓練を受けた治療者も、全国で数えられるほどしかいらっしゃいません。そこでKAEMUでは、英米で出版されている家族療法の様々な情報を翻訳し、日本の摂食障害の患者さんやご家族の皆様に、家族療法についての情報を提供します。

 

「我々が問題ではなかった。

我々は解決策の一部なのだ。(*2)」

例えば、米国では、家族療法は全国的に数多くの専門的治療機関で提供されており、その治療の一環であるカウンセリングや診療費などの医療費の多くは保険でカバーされています。それに加えて、摂食障害という病気の正しい知識が、社会にも医療従事者にも広く知れ渡っているため、米国は日本よりも摂食障害者が生きやすく、回復しやすい環境であると思います。

 

日本の場合、この病気にかかったかなと思ったら、おそらく地元の小児科、心療内科、あるいは精神科に足を運ぶでしょう。その時、医療者からは、「親の嫌なところは何ですか」「親に言いたいことは何ですか」と聞かれることが多いようです。つまり多くの医療者は、未だに摂食障害の原因追及を家族に対して行うことに熱心です。しかしこの病気に最も有効な家族療法という治療法では、家族が先頭に立って病気を治していかなければなりません。その鍵になるのが親のエンパワーメントなのに、親が犯人として追及されては、親は自分を責めるばかりで、積極的に病気の回復に関わろうという気持ちが萎えてしまいます。若い患者さんには、家族が一番効果的な解決策なのです。

参考文献:

*1  Lock J. Le Grange D, Agras WS, et al. Randomized clinical trial comparing famiy-based treatment with adolescent-focused individual therapy for adolescents with anorexia nervosa. Arch Gen Psychiatry 2010; 67 (10): 1025-32.

*2 https://www.uchicagomedicine.org/forefront/news/2010/october/family-based-treatment-found-most-effective-for-anorexia-nervosa-patients

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